飲み方・使い方
Q.食前や食後とは具体的にいつのこと?
A.
食前 :食事の30分ぐらい前。
食直前:食事のすぐ前。
食直後:食事のすぐ後。
食後 :食事のあと30分ぐらい迄の間。
食間 :食後の2時間ぐらい後。
就寝前:寝る30分ぐらい前。
頓服 :症状のある時(例えば、熱があるときや痛みがあるときなど)に一時的に飲むこと。
Q.なぜ薬を飲むときが決まっているのでしょうか?
A.食事をすることによって体の中に吸収される薬の量が少なくなる場合や胃の中に何もないと胃を荒らす場合もあります。また、体内で作られる様々な物質や薬に対する体内の感受性は1日のうち時刻によって大きく変化します。したがって、薬を飲む時間を守らないと、薬の効きが悪くなったり、副作用が現れやすくなります。
Q.カプセルをはずしたり、錠剤をつぶして飲むのはどうでしょう?
A.味やにおいがきつく飲みにくくなる場合があります。それ以上に大切なことは、1日1~2回の服用のカプセル剤や錠剤の中には、吸収時間を変えることにより効果が長続きするようにしているものや、また、1日3回以上飲む薬でも胃酸による分解を防ぐために胃で溶けず腸で初めて溶けるようにして効果を高めたり、副作用の軽減を目的としたものがあります。したがって、勝手にカプセルをはずしたり、錠剤をつぶして飲むと効果がなくなったり、副作用が現れやすくなったりします。
Q.貼り薬はいつも同じ場所にはるのが効果的ですか?
A.貼り薬には大きく分けて2種類あります。ひとつは打ち身やねんざなどのとき、その場所に貼るものです。これは痛みや炎症のある場所の皮膚に貼ることで、そのすぐ下の炎症部位において効果を示します。したがって、炎症を起こしている場所に貼ることが大切です。もう一つは狭心症やぜん息の発作を防ぐために胸などに貼るもので、薬が皮膚から一度血液中に吸収されて、血液により薬が心臓や気管支に運ばれ効果を示します。したがって、いつも貼っている皮膚が荒れてくれば、その近くの(離れた場所に貼ると吸収速度が変化する場合がある)別の場所にはっても効果に差し支えありません。
効き目・効果
Q.薬を飲むときの年齢の区分について教えて下さい。
A.通常は以下のとおりです。
大人:15歳以上
小児:15歳未満
幼児:7歳未満
乳児:1歳未満
新生児:出生後4週未満
Q.飲んだ薬はその後どうなるの?
A.飲んだ薬の大部分はまず胃や腸から吸収され、肝臓を通り体内に入ります。次に、血液で体内のさまざまな場所や臓器に運ばれ(この過程を分布と呼びます)、効果を示すことになります。その後、徐々に肝臓で分解や無毒化などの変化を受け(この過程を代謝と呼びます)、腎臓から尿に混じって体外に出されたり、一部は胆汁と一緒に便に混じって体外に出されたりします(この過程を排泄と言います)。このように大部分の薬は体内で、吸収・分布・代謝・排泄という過程を通ります。
Q.一度にたくさん薬を飲んだり、1日1回の薬を1日3回飲めば、早くよく効ききますか?
A.確かに一度にたくさん薬を飲んだり、1日1回の薬を1日3回飲めば、薬は体内に多く吸収され、血液中の薬の濃度は高くなります。しかし、副作用もまた出易くなります。特に重大な有害作用も現れやすくなるため、一度に多く飲むのは危険です。決められた量を飲みましょう。
Q.薬には薬同士の飲み合わせや特定の食べ物との食べ合わせがある?
A.2種類以上の薬を飲んだときに、効果の増強や減弱、副作用が起こることを「薬物相互作用」と呼びます。これは、病院でもらう薬(医療薬)ばかりでなく、市販薬(一般薬)や漢方薬、特定の食品などとの間でも起こる可能性があります。(なぜ薬を何種類も飲んでいる人に副作用が現れ易いのでしょうか?を参照)。例えば、ワルファリン(血液を固まりにくくする薬)は、納豆、クロレラやブロッコリーを食べることで、その効果が減弱します。逆に、高血圧症に用いられるカルシウムブロッカーはグレープフルーツなどで、体内の薬物濃度が高くなり副作用が現れやすくなります。その他の薬にも種々の相互作用があります。個々の薬について詳しいことは医師や薬剤師にたずねましょう。
副作用
Q.副作用とは?
A.副作用とは、薬の本来の目的としない作用のことです。たとえばかぜ薬を飲んで眠気が出た場合、その眠気は副作用となりますが、ぐっすり眠ることで体を休めることにつながれば、その副作用については特に問題はありません。また、2つ以上の病気に使用される薬は、ある病気に対する効果が、別の病気の際には副作用になる場合もあります。そこで副作用のうち、特に悪い症状を起こす作用を「有害作用」と呼びます。しかし、この有害作用はすべての人に現れるというものではなく、また、同じ人でもいつも同じ有害作用が現れるわけではありません。
Q.特に副作用に気を付けた方がいい人とは?
A.アレルギーなど特異体質のある人。
過去にひどい副作用を経験している人。
小児やお年寄り、肝臓や腎臓に病気のある人。
ほかにも薬を飲んでいる人。
たばこやお酒の習慣のある人。
妊娠やその可能性のある人。
高所での作業やプロドライバーなど危険を伴う仕事に就いている人。
こういう人はあらかじめ医師や薬剤師にそのことを言って相談してください。
Q.なぜ肝臓や腎臓に病気のある人に副作用がでやすいのでしょうか?
A.大抵の薬は体内に入ると、肝臓で代謝(分解や無毒化などの変化)を受け、腎臓から尿に混じって体外に出されます(排泄)。したがって、肝臓の機能が低下すれば代謝が遅くなり、また、腎臓の機能が低下すれば、排泄が遅れます。その結果、体内に薬がいつまでも残ることになり、副作用が現れやすくなるのです。
Q.なぜ薬を何種類も飲んでいる人に副作用が現れ易いのでしょうか?
A.体内の薬が肝臓で代謝(分解や無毒化などの変化)を受けるとき、同時に飲んだ薬が一方の薬の代謝を抑えたり、また、薬が腎臓から尿に混じって体外に排泄される際に、同時に飲んだ薬が一方の薬の排泄を減少させたりすることがあります。その結果、体内に薬がいつまでも残ることになり、副作用が現れやすくなります。さらに、血液中にある薬のうち何%かは血液中のタンパク質と結びついて、薬としての作用を示しませんが、同時に何種類もの薬を飲んでいると、ある薬が血液中のタンパク質から他方の薬を引き離すため、その引き離された薬の濃度が高まり、作用が異常に強まり副作用が現れ易くなります。
Q.なぜお年寄りに副作用がでやすいのでしょうか?
A.複数の病気に罹っているため、多く診療科や病院に通い、また市販薬などのさまざまな薬を飲んでいる可能性が高く、このため、薬どうしの相互作用が起こりやすい(なぜ薬を何種類も飲んでいる人に副作用が現れ易いのでしょうか?を参照)。また、お年寄りの方は肝臓や腎臓の機能が低下している場合が多い(なぜ肝臓や腎臓に病気のある人に副作用がでやすいのでしょうか?を参照)。さらに、目や耳の機能が低下したり、注意力や記憶力の低下により、間違った薬の飲み方をしてしまう。などの理由が考えられます。
Q.副作用をできるだけ避けるためには?
A.薬を飲んでいていつもと違う体の変化が現れたら、なるべく早く医師や薬剤師に相談する。副作用かと思っても必ずしも薬が原因とは限らないため、勝手に服薬を中止せず、医師の指示を受ける。複数の病院で薬を処方してもらう場合、今飲んでいる薬を医師に告げるか、現物を持参する。市販の薬を常用している場合はそのことを医師に告げるか、現物を持参する。市販薬を購入する場合、常用している薬を薬剤師に告げるか、現物を持参する。薬を飲んでいる場合には飲酒や特定の食べ物を避ける(薬と食べ合わせを参照)。薬は決められた分量を決められた時間に飲み、飲み忘れた場合の対応を医師や薬剤師にあらかじめ尋ねておく。アレルギー体質は遺伝する場合もあるので、親兄弟の体質も知っておく。慢性病のため長く薬を飲んでいる場合、決められた定期的な診察を受け、医師のチェックを受ける。もし副作用を経験したらその薬の名前を確かめ、その時の症状を記録しておく。その他に、いろいろ相談できるかかりつけの医師や薬剤師を決めておくことも良いでしょう。
その他
Q.病院で処方してもらう薬と処方せんなしで買える薬とのちがいは?
A.病院で処方してもらう薬(医療薬)と処方せんなしで薬局で買える薬(一般薬)では、一般に医療薬の方が作用が強力です。また、バファリン(解熱鎮痛など)やガスターやマーロックス(胃炎や胃潰瘍など)などでは同じ商品名でも医療薬と一般薬では、含まれる薬の種類や量に違いがあります。
Q.インターネットで日本では手に入らない薬を個人輸入したいのですが?
A.薬の個人輸入を代行する業者がインターネットでは多くあり、高価ではあります(健康保険がきかないためなど)が海外の薬を手にすることが比較的簡単になってきました。しかし、そもそも、薬の個人輸入は日本に住む外国人が、その国で使用していた薬を日本でも引き続き手に入れるためにある制度です。そのため個人が自分で使用するために輸入する場合、又は海外から持ち帰る場合は、厚生労働大臣の許可は必要ありませんが、輸入できる数量が制限されています。これには薬だけでなく、化粧品や医療用具や養毛剤、浴用剤など人体への作用が緩やかなものも含まれます。ただし、日本人と外国人ではその体格や薬を無毒化する機構に大きな差がある場合があり、思わぬひどい副作用が現れたり、効かなかったりすることがあります。さらに、医薬品に人体に有害な量の「ヒ素」や「水銀」が含まれていた事例、糖尿病薬(純天然薬と表記されていた)として海外で購入した医薬品に、劇薬に指定されている血糖降下薬が配合されていた事例などのため、半植物状態や死亡に至った例もあります。さらに化粧品においても「水銀」など日本では禁止されている成分が配合されていた事例もあります。海外からの薬や化粧品や医療用具の購入使用には充分に注意していただきたいと思います。もっと詳しい内容をお知りになりたい場合は厚生労働省本省(医薬局監視指導・麻薬対策課輸入監視係)電 話 : 03-5253-1111 内線2768、FAX : 03-3503-1043にお尋ねください。
Q.インフォームド・コンセントとは?
A.医師から文書で十分な説明を受け、自由意志により患者さんが納得できる医療を作り上げていくための過程のこと(文書で同意)で、さらに最近ではインフォームド・チョイスという説明を受けたあとの治療法の選択という患者さんの自己決定権をさらに大きくふまえた考えも生まれつつあります。
米国厚生省の患者向け「医療ミスを防ぐための20カ条」からの抜粋について
米国厚生省(HHS)の下部組織であるAgency for Healthcare Research and Quality(医療分野研究と質向上を支援する部門)が、患者さん向けに「20 Tips to Help Medial Errors(医療ミスを防ぐための20カ条)」を公表しました。これには、医療ミスを防ぐために患者の立場からできることを、具体的な研究結果により示しております。そこで、今回、第2項目から9項目までのお薬に関する項目を取り上げます。
[第2項目]
あなたが服用(使用)しているすべてのもの、たとえば、処方薬(病院や処方せんで薬局から受けるお薬)、一般薬(薬局で処方せんなしで購入できるお薬)、ビタミンやハーブ(日本の場合であれば漢方薬も含まれる*)のような健康補助食品(いわゆる健康食品や健康飲料)も含めて、医師に告げてください。
[第3項目]
あなたが薬を服用したときに起こったアレルギーや副作用について医師に必ず告げてください。
[第4項目]
処方せんをもらったとき、その処方せんが読めますか?
[第5項目]
処方せんを書いてもらったときと、お薬を受け取るときの両方ともに、あなたが理解できるようなことばで、そのお薬の説明を受けましょう。
[第6項目]
薬局でお薬をもらうとき、そのお薬はあなたの主治医が処方したお薬かどうかを尋ねてください。
[第7項目]
もし、お薬のラベルに書かれている説明(説明書)について何か疑問があったなら、たずねましょう。
[第8項目]
液剤やシロップを量るための、もっとも適切な器具をたずねましょう。また、その器具をどのように使用するのかについてもたずねましょう。
[第9項目]
お薬で起こる可能性がある副作用(有害作用)について書かれている紙をもらっておきましょう。
その他(入院時に関する注意など)の情報に関しては下記のAgency for Healthcare Research and Qualityのホームページをご覧下さい。
https://www.ahrq.gov/patients-consumers/index.html (外部リンク)